意外と多い?不動産のトラブルやデメリットを隠す売主たち
不動産を売却するとき、できるだけ高く売りたいと思うのは当然のことです。しかし、物件自体にデメリットがあると、百万円単位で売却額が下がる可能性があります。そのため、本来告知しなければならない物件の不具合を隠す売主はあとをたちません。悲しいことですが、人はお金が絡むと誠実な対応ができなくなってしまう場合があるのです。
残念ながら申告しない売主が多数…
不動産の売却を考えているとして、買主に物件のデメリットを正直に申告しますか?デメリットが分かると売却額が数百万円下がるかもしれないとき、必ず申告すると断言できるでしょうか?
人はお金が絡むと誠実さが揺らいでしまうことがあります。買主は「物件に不具合があれば正直に申告してくれるはず」と思うかもしれません。しかし、残念ながら物件のトラブルやデメリットを申告しない売主がいるというのが実情です。
修繕積立金が崩壊している物件
修繕積立金とは、大規模な修繕工事に備えて、通常の建物の維持費とは別に積み立てておく費用のことです。一定年数ごとの点検や修繕、災害などの特別な事情で行う修繕などに使われます。
通常、修繕積立費はマンションの管理組合が作成する「長期修繕計画」に基づいて決まります。長期修繕計画は新築マンションの場合30年以上、既存マンションの場合は25年以上と定められており、外壁の補修や給排水管の取り換えなど、快適で安全に暮らすための性能維持が目的です。
一般的に、大規模な修繕工事は12年に一度行われ、負担額は1戸あたり100万円程度が相場といわれています。しかし、2~3回目の大規模修繕工事が行われる頃には、積立費が不足してしまうケースがあるのです。
不足した場合は、月々の修繕積立費が値上がりするか、一括で支払うことになります。残念なことに、この修繕積立費の増額や追加徴収を隠す売主がいます。そんなことを申告して、資産価値が下がっては困るからです。
「知らなかったことにして、売ってしまおう」というわけですね。買主側からすれば、月々の負担額が増えるわけですから、購入を再検討するか値下げ交渉をしようと考えるでしょう。売却額が下がらないように意図的に申告しないのは、良識があるとはいえません。
周辺物件の心理的瑕疵の隠ぺい
心理的瑕疵とは、住むにあたり心理的に抵抗を感じる物件のことを指します。具体的には、自殺や他殺があった物件や、事件現場になった物件などのことです。いわゆる「事故物件」です。
心理的瑕疵について具体的な基準はありません。「その事実を知っていたらその物件は買わなかった」という場合、心理的瑕疵がある物件とされます。
たとえば、自然死であっても、発見が遅れて特殊清掃をした場合は心理的瑕疵があるとされています。多くの人は心理的瑕疵のある物件に住むのは避けたいと考えるのではないでしょうか。
また、物件自体に瑕疵はなくても、周辺の物件に瑕疵がある場合があります。上の部屋で自殺があった・近所で殺人事件があったと聞いて、その物件を買いたいと思うでしょうか?売却物件だけでなく、周辺物件の心理的瑕疵についても伝えるほうが誠実といえます。
ところが、心理的瑕疵を隠ぺいする売主がいるというのが実情です。心理的瑕疵のある物件は当然ながら売却額が下がります。売主は「調べなければ分からないから大丈夫」と思っているのでしょう。
しかし、心理的瑕疵は必ず告知しなければなりません。もし、心理的瑕疵を隠して売買契約をし、その後発覚した場合は、損害賠償を請求される可能性があります。些細なことでも告知するべきです。
建物自体の瑕疵の隠ぺい
建物自体の瑕疵の隠蔽もよくある事例です。雨漏りや部屋の傾きはもちろん、汚れやシミなど、本来建物の状態は正直に伝えるべきでしょう。しかし、売却額が下がることをおそれて建物の瑕疵を隠ぺいする売主がいます。
大きな目立つシミの上にわざとカーペットを敷いたり、壁に開いた穴を絵画で隠したり、内見時に見つからないように細工をする売主も。
売主は「中古物件だから不具合は仕方ない」と考えているのかもしれません。たしかに多少の傷は経年劣化であるといえるでしょう。しかし明らかに自然についたものではない傷や多額の修理費がかかるような不具合は、きちんと申告すべきです。
当然のことですが、状態がよいほうが高く売れます。修繕できる部分は対応し、クリーニングなどもしておくとよいでしょう。
また、物件や設備の不具合は、引き渡し前にすべて直してくれると思っている買主は意外に多いです。その見解の差が、のちのちトラブルにならないとも限りません。
建物の瑕疵を隠したまま売却すると、あとから損害賠償を請求されるおそれもあります。売主が対応できない瑕疵は事前に申告し、買主に納得してもらうことが大切です。
隣人トラブルを報告しない
住んでみて初めて分かるのが、隣人トラブルです。騒音トラブルをはじめ、ゴミ袋を開けてチェックする人がいる・近所に暴力団事務所がある・私道に車を止めっぱなしなど、さまざまな隣人トラブルがあります。
外から見ただけでは分からないという点が、隣人トラブルの厄介なところです。よい物件が見つかったと思ったのに、引っ越してから隣人トラブルがあることを知ったという人もいるでしょう。
さらに隣人トラブルの難しいところは、「環境に対する感じ方」には個人差があるということです。大きな音や振動がまったく気にならないという人もいれば、階段を上る音すら耳障りだという人も。
この「感じ方に差があること」を言い訳にして、隣人トラブルを意図的に報告しない売主がいます。住んでいると慣れてしまい、気にならなくなっているのかもしれません。
しかし、個人差があるからこそ些細なことも伝えるべきではないでしょうか。隣人トラブルがある物件を避けるためには、自分で足を運んで確かめるしかありません。
何日かに分けて違う時間帯に行ってみる・近所の人に聞いてみるなど、情報収集をしましょう。内見時には気づかなかったことが見つかるかもしれません。
また、自分で行くことが難しいときは、近隣トラブルを調査する会社があるので、相談してみるのがおすすめです。一度マンションを買うとすぐに引っ越すことは難しいので、トラブルを避けるための手間は惜しまないほうがよいでしょう。
不動産売買は高額です。高額ゆえに、誰もが失敗したくないと考えています。売る側は、大切な資産をなるべく高く売りたい。そのためには、売却額が下がるようなデメリットは知られたくないと思っています。
もしデメリットを申告したら、価格に数百万円の違いが出てしまうかもしれません。その後の資金計画に影響が出るおそれもあるでしょう。
普段誠実な人でも不具合を隠したくなる気持ちは、容易に想像できます。しかし買う側は、満足のいく資産を買いたい、デメリットは事前に伝えてもらい、納得したうえで購入したいと考えています。
マンションの購入は、人生にそう何度もあることではありません。購入した資産に不具合があると分かれば、ショックを受けるのは当然です。損害賠償に発展するケースもあります。
最も大切なことは、誠実な対応をすることと思いやりを持つことです。双方にとって重要な取引だからこそ、事実を正直に伝える必要があります。相手の立場になって、思いやりを持った対応をしましょう。誠実さと思いやりが、双方にとってのよい取引につながるのです。