工作物責任って何?損害賠償が発生する可能性があるってホント?
災害など思わぬでき事があり、自分の所有する建物がほか人に損害を与えてしまうこともあります。このような場合「工作物責任」によって、建物の所有者は被害者に損害を賠償しなければなりません。工作物責任についてさらに詳しく、工作物責任を負うケースはどのようなものがあるかなど解説します。
工作物責任とは
建物は災害だけでなく、老朽化などが原因で外壁がはがれ落ちたり看板が落下したりすることもあります。人や物に被害が及ばなければ問題ありませんが、もしはがれた外壁や落下した看板が通行人を死傷させる、通行、あるいは駐停車していた車を破損させた場合は損害賠償する必要があります。
建物、つまり工作物の「占有者」が被害を受けた人に対し損害賠償を負うのですが、占有者が損害の発生を防止するための必要な注意をしていれば「所有者」が損害を賠償することになります。
工作物とは?
人工的な作業により、土地に接着して建てられた設備のことで、建物のほかに井戸や水道設備、道路や踏切、スキーのゲレンデなども工作物にあたります。また、実際に工作物責任の適用が認められたものの中には、天井や床、エレベーター、工場内の機械などもあります。もともと存在していた天然の池や沼は工作物ではないうえ、土砂を運び入れ積んでできた堆積土なども工作物に含まれません。
占有者と所有者とは?
占有者は建物などを借りている人、所有者はその建物などを所有している持ち主のことです。
損害賠償責任を負うケースとは
建物などの工作物が壊れただけでも大変なのに、損害賠償責任を負うというのは二重に費用がかかることになります。しかし、すべての場合に損害賠償責任が発生するわけではありません。損害賠償責任を負うケースとは、どのようなものがあるのか解説します。
設置または保存に「瑕疵」がある場合
「瑕疵」とは欠点やあやまちの意味、法律では通常あるべき品質を欠いていることだとしています。工作物の設置・保存に瑕疵があるとは、建物などの工作物が通常備えるべき安全性を欠いていることです。
工作物自体が壊れており、安全性を欠いた危険な状態になっていた場合はもちろん、壊れるなどの結果がなくても本来備えるべき安全性を欠いていたなら、瑕疵が認められることがあります。瑕疵があれば工作物責任の対象となるのですが、震災などの災害では損害が生じたのは瑕疵があるためなのか、不可抗力なのか問題になることが多いです。
損害を賠償するのは?
工作物の設置や保存に瑕疵があってほか人に損害を与えたときは、工作物の占有者、つまりその工作物の借り主が損害を賠償します。
しかし、占有者が損害の発生を防止するための注意を払い対策していたなら、占有者は免責され損害を賠償する必要はありません。その代わり、工作物の所有者が賠償する責任を負います。
占有者・所有者以外が賠償するケースも
損害が発生したけれど、占有者・所有者どちらにも責任がないというケースもあります。損害の原因について、ほかにその責任を負う人がいるということで、その人に対し占有者や所有者は「求償権」を行使できます。
求償とは、ほか人のために弁済をした人が、ほか人に対してその返還や弁済をもとめることです。求償権はその権利です。ほかにその責任を負う人とは、たとえばその建物や設備に対し手抜き工事を行った業者などです。
もし不動産関連のトラブルが起きたら?
震災などの災害は、予想できないような被害をもたらすことも多いです。そのような災害で所有する建物が壊れ、ほか人に損害を与えてしまったら「災害は避けられないから仕方ない」と思うかもしれません。
しかし、上記でも説明したように、瑕疵があった場合は損害賠償責任を負うことになります。その建物を自分が建てて所有している人だけでなく、建てたのはほかの人で自分が後から購入した人の場合も、瑕疵があれば賠償しなければなりません。所有者には過失がない場合でも免責されることがなく、納得できないかもしれませんが法律でそのように定められています。瑕疵がある、ないでトラブルになることもありますから、建物を所有しているならその安全性に注意しなければなりません。
地震に備え耐震性の診断を行うなど、建物の状況を把握しておいてください。瑕疵が建物の設計などの不備によって生じることもあるかもしれません。その場合、所有者が建築士に対し損害賠償を請求できます。もし、不動産に関してこのようなトラブルが起こってしまった場合は、法律のプロである弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
自分が建てたわけではなく、もちろん自分に過失があるわけでもない建物で、損害賠償を負うのは納得できないと思います。このような法律が関わってくる問題は、ややこしく自分で解決することは難しいでしょう。賠償責任があると告げられても、実はそのよう事実がない可能性もあるので、法律の専門家・弁護士などに相談してみましょう。悩んでいても解決することはないですから、早めに行動することをおすすめします。